年下の経営者から学ぶことの重要性

 随分と昔の話で恐縮である。人間歳を重ねると過去のことを思い出し懐かしむことが多いようである。

 それは、筆者がまだ信用金庫に入りたての頃のことである。ある取引先の60歳を過ぎた社長さんが、筆者のような厚顔無恥の若輩にもかかわらず、訪問する際にはいつも丁寧な言葉遣いと態度で実に真摯な対応をしていただいたことをまるで昨日のことのように思い出す。

 それから何十年も経っているが、多くの経営者にお会いしてわかったことは、優れた経営者は決して年齢だけで人を判断しないということである。では、その経営者たちは何故年下の者にも分け隔てなく接してくれたのだろうか。

 これはあくまで筆者の推測であるが、いつの時代も情報の最先端にいるのは若い人たちである。彼らからほんの少し旬の情報をお裾分けしてもらうだけでも、その情報に何らかの価値があることを見出していたのではないだろうか。現に筆者もIT部門や税務関連の情報収集などは若い人にやってもらっている。最新のネットビジネス事情や目まぐるしく変化している消費者ニーズの把握などは、若い人の情報収集力には到底かなわないと思っている。

 ビジネス成功の一つの鍵を握っているのが、豊かな感性や迅速な行動力を持つ若い人であれば、筆者は日頃からできるだけ多くの年下の経営者や専門家などと付き合うことが重要であると考えている。

 筆者も含めて、「近頃の若い者は・・・」(筆者が若いころも親世代の人からいつも言われていた言葉なのだが)と嘆く前に、ここは思い切って胸襟を開き、様々なことを教えてもらう良き関係性を築くことも悪くはないと思う。また「聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥」ともいうではないか。

 歳をとればとるほど、頑なに意地を張り通したくなるものだが、自分は年下の人からいろいろな有益なことを教えてもらっている存在だということを自覚し、年下の人へのリスペクトと感謝の気持ちを持って、特に経営を司る立場にいる者は、年下の経営者や専門家などから学ぶ姿勢を日々忘れずにいたいものである。