「教える技術」を強化する

 筆者は経営コンサルタントという職業上当然のことであるが、学び続けることは必須であり、それはとても重要なことだと思っている。

 しかし、ただ学び続けるだけでは本当の意味での成果にはつながらない。自分が学んだことを「顧客に教える」という行為によって、はじめて自分の理解が深まり、質の高いコンサルティングの提供ができるのだと考えている。経営学者のドラッカーも「人は何かを教えるときに最も学ぶことができる」としている。

 また、講習やセミナー、読書などでインプットされた情報も、時間の経過とともに記憶から徐々に薄れていくのが一般的である。そのなかでも最後まで記憶に残るとされているのが、誰かに教えたという経験である。これは、下図のように教育学で使われている「ラーニングピラミッド」においても、誰かに何かを教えるスキルを磨くということは、知識がより自分のものになることを実証している。

ラーニングピラミッド

【ラーニングピラミッド】

 この考え方、理論を御社にも是非取り入れてほしい。例えば、テーマを決めて定期的に勉強会を開催し、社員に持ち回りで講師をさせるやり方などである。具体的には、新商品や新サービスを開発、販売するときに、開発担当者が性能・機能など商品知識を講義したり、営業担当者が販売促進の方法を講義したりすれば、さらに、より良い商品、サービスづくりへのヒントになる可能性が大きい。誰かに教えることのメリットとしては、

(1)複雑な情報が少しずつ整理されること

(2)教える責任上、最新の情報を収集するようになること

(3)どこにニーズがあるかを把握することが可能になること

(4)より分かりやすく伝えるにはどうしたらよいのかを追求できること

(5)教わる側のスキルアップが図れること

(6)教えた内容にもとづいて商品化が促進すること

(7)マニュアルの作成ができること

などメリットがたくさんある。教える形はセミナー形式でもよいし、1対1の個別指導型でもよい。教える技術を強化することは、知識のマネタイズ(無収益のサービスを、収益を生み出すサービスに転換する)につながると思うので積極的に推奨したい。