「自社の強み」を知るためには・・・

 自社の強みを活かした経営を行うことが極めて重要なのは百も承知なのだが、それが簡単にできるほど世の中けっして甘くはない。

 しかし、他社の成功事例をベンチマークすることでヒントが得られることも多々ある。

 そこで、今回ご紹介するのは、長野県伊那市にある伊那食品工業である。伊那食品工業は創業以来、半世紀にわたり寒天を研究し続けてきた。伊那食品工業といえば“寒天の研究”といわれる会社だ。伊那食品工業は、その名前のとおり食品メーカーであるが、実は寒天づくりの強みを活かして化粧品や医薬品事業も展開している。その結果、寒天の国内市場のシェアは約80%、世界的にみても15%のシェアを誇るブランドとして知られている。寒天という一つの素材への追求は、社員の1割を寒天の研究・開発に充てていたことからも分かるように、寒天を食べ物として活用するだけでなく、寒天を用いた医薬品や化粧品の開発に注力したことが今の成功につながっている。

 翻って、「自社の強みは何なのか?」を知ることが必要不可欠である。自社の強みを把握する手法としてコア・コンピタンスというものがあるので参考にしてほしい。コア・コンピタンスとは、圧倒的な企業の強みを持つことを指し、「企業の中核的な力」、「力を発揮するための経済資源」を意味し、以下のような模倣可能性、移転可能性、代替可能性、希少性、耐久性の5つの要素を満たしていればコア・コンピタンスであると考えてよい。

【コア・コンピタンス5つの要素】

模倣可能性 技術や特性が簡単に真似できるものではないこと。模倣可能性が低ければ競争優位性は高い。
移転可能性 一つの技術が他の製品や分野に応用できること。 
代替可能性 技術や製品が他社にはない唯一無二の特性を持ち、代替が利かないものであること。
希少性 模倣可能性や代替可能性が低い技術や製品で希少価値が高いこと。
耐久性 特定の技術や特性が長期にわたって競争優位性を保つこと、ブランド力など長い年月をかけて培ったものが該当する。

 ただし、強みといえる要素が有効かどうかは、市場環境や社会環境の変化によって変わり、確定したものでも陳腐化してしまう可能性も否めないことから、常に見直しを図ることは言うまでもない。