働き甲斐を高めるには・・

 日本企業の労働環境が改善する一方で、働き手の仕事への充実感や達成感といった「働き甲斐」は思うように高まらないようである。1人当たりの労働時間は2020年に、2016年と比較して100時間減少するなど働きやすくなったものの(出所:厚生労働省)、仕事に熱意を持ち会社に貢献したいと考える社員の割合は6割弱と世界では劣位にある(出所:米人事コンサル大手のコーン・フェリー)

 働き甲斐の面で改善がみられない背景には、日本企業の組織運営の改革遅れがあるとみている専門家は多く、前出のコーン・フェリーは、「上位下達の組織風土や年功序列によるポスト滞留など旧来型の日本経営が社員の働き甲斐の低迷に影響を及ぼしている」と分析している。

 また、「個人の創意工夫の範囲が狭まっていたり、現場に権限委譲が進んでいなかったりすることも要因」との指摘もある。

 では、社員の働き甲斐を高めるとどんなことが起きるのだろうか。働くことを通じて幸せを感じる社員の多い企業で売上高が伸びたのは約34%、幸せを感じる社員の少ない企業で売上高が伸びたのは約25%と、社員の働き甲斐は企業の業績にも大きく影響することがわかっている(出所:パーソル総研と慶應大学の2019年~2020年の調査)

 一方、社員の働き甲斐を高めるための施策を展開する企業も増えている。例えば、社員同士で感謝のメッセージを送り合うシステムや、社員の推薦をもとに所長がプロジェクトを表彰する制度の導入(日本たばこ産業)、社員の働き甲斐スコアを定期的に調べるなどして組織の活性化につなげる仕組みづくり(第一生命)などが挙げられる。

 経団連も社員のエンゲージメント(社員が会社を信頼し貢献したいと考えること)を高める取り組みが必要不可欠としている。

 上述のどの施策についてもそれほど複雑なものではなく、コスト的にも導入が難しいものではないと思われる。

 社員それぞれの働き甲斐は千差万別だとは思うが、経営者は先ず原点に立ち戻って「社員の働き甲斐とはどのようなものなのか」を把握することから始め、それらの傾向を分析したうえで働き甲斐向上のための諸施策を立案し、費用対効果などを十分に考慮し優先順位を決め導入していくことが不可欠だと思う。結果として、社員の働き甲斐を高めることは、業績アップにもつながる。