理髪店について再考してみた・・

 特に男性の皆さんにお伺いいたします。「あなたは美容院派ですか?理髪店派ですか?」

 因みに筆者は長きにわたり理髪店派である。そんな筆者のところへ「理髪店で商売をしたい」という若者(男性)が相談に来た。

 美容院での起業はある程度想定できるが、理髪店は減少傾向にあり、これは珍しい案件だと思った。

 起業の動機を聞いてみると、彼は地元の高校を卒業した後に東京の理容専門学校に進学し、卒業と同時にそのまま東京の理髪店に10年以上の勤務を経て、故郷である浜松に戻ってオシャレな理髪店を持つのが夢ということであった。

 さらにヒアリングしてみると、現在は起業に向けて浜松の理髪店で2年間修業しているという。

 東京の市場や顧客ニーズは、浜松のそれとは異なるから、浜松の現状を知りたかったということらしい。若いのに実に用意周到であり感心してしまった。浜松のお客様のニーズは、やや短いカットで時間も短いコースを好む人が多いという。

 ターゲットは、メインが20~40代の男性、シルバー(店舗のバリアフリー化・出張理容)、子ども(キッズコーナー設置)にも対応し、価格帯も値ごろ感があるものに設定し、持ち前のスピーディーなカット技術を駆使して客回転率を上げるという。しゃべりや物腰も嫌みがなく好感が持てる。10分1,000円カットのFC理髪店と一般個人店とのいいとこ取りをした形である。

 また、理髪店の強みは顔そりができることだが、美容院はそれができない。女性が顔をそるために理髪店に来店するケースも少なからずあり、女性のシェービングニーズも取り込める。このようなことからも正に美容院がレッドオーシャン(競争の激しい市場)なら理髪店はブルーオーシャン(競争の少ない市場)だ。

 実は筆者の周辺の理髪店でも「理容専門学校の学費を全額出してもいいからインターンとして働いてほしい」という理髪店主の悩みを聞いたことがあるくらいだ。

 一見地味で将来的には懸念材料もある理髪店だが、彼のようにやりようによっては十分勝負できる業界であることも分かっている。

 一連のヒアリングをとおしてコンサルとしても改めてビジネスの原点を見直す機会となった。そして、彼に対する支援の気持ちが一層強まった。

 今お世話になっている理髪店にはたいへん申し訳ないが、彼の話を聞いているうちに理髪店がオープンしたら散髪に行ってみたくなったことは言うまでもない。