経営者が気づかない「危険」のサイン

 企業は生き物だとよく言われる。人間と同様に生まれた以上永遠の命などなく、必ず死(廃業・吸収合併・倒産等々)に向かって変化を続けていくことになる。大病の進行と同じように企業の症状も経営者はなかなか自覚できないものである。気づいたときには既に手遅れとなっているのは身体と同じかもしれない。

 経営者の不摂生な経営の積み重ねが会社の危機を誘発することから、経営者は少しでも早くそれに気づき大病を防がなければならない。

 経営者が気づかない危険のサインとして挙げられることは、(1)自社がマーケットを支配していると錯覚すること(自社が市場を成り立たせていると思い、販売店や消費者の声に耳を傾けなくなる。そのうえ業績が悪化してもマーケットのせいにして自らを改めようとはしない)、(2)わずかな売上下落を安易に受け止めること(売上の少ない頃には、売上がわずかに落ちても気にして改善を試みるが、ある程度の売上を保つようになると、1つ取引先がなくなっても「まだこれだけあるから1件くらい」と安易に考え危機感を持たない。こうした気の緩みが、1件が2件に、2件が3件にと続けて顧客をなくす結果を招き、気づいたころにはもう手遅れになっている)、(3)過去の成功事例をすべてだと思い込むこと(どんな問題であってもこの1つの成功事例をもって対処すれば再び成功するという錯覚で、上手くいかなったときには、状況や環境が違うことを理解しようとせず、担当者などのせいにして無能力扱いをする)である。

 以上の危険のサインを見逃していると間違いなく企業(事業)を衰退へと導いていく。社会の価値観は目まぐるしく変動を続け、数年前に成功した手法は使えないのだが、成功を収めた自信が過信となって社会の変化を見えなくしてしまう結果をもたらす。

 だから、成功事例が大きければ大きい企業ほど、危険であると意識することが必要不可欠だと思う。

 危険のサインに気づいたらやるべきことは、「常に初心に戻ること」であり、創業時の「一途な思い」を思い起こすことであろう。

 大相撲九州場所をテレビ観戦していて、元大関の御嶽海と大関正代の残念な成績を目の当たりにし、彼らもきっと大相撲に入門したころの「一途な思い」をなくしてしまったことが現在の結果につながっているのだと思う。今回のテーマの草案はそこから始まった。