「事業承継」はリスクが少ない!?

 筆者の身近にも優れた技術や良い商品・サービスを持っており、経営も安定しているにもかかわらず、後継者がいなくてやむなく廃業・閉店する事例は少なくない。

日本は超高齢化社会に突入し、経営者の平均年齢もついに60歳を超えた。日本国内の実に65%が後継者不足による事業承継問題を抱えており、現在60万社が黒字倒産の危機にあるとされ、問題はより深刻化している。後継者が見つからなければ、数年のうちに廃業する企業の増加は加速していくことが予想される。

 この背景には、親の会社を子どもが継ぐことが当たり前ではなくなっていることや、企業のオーナーは、子どもの教育にお金をかけている人も多いので、子どもが一流企業に勤めていたり、士業などの専門職に就いていたり、仕事を辞めたくない子息・息女も多いことが挙げられる。

 そして何よりも自分の子どもには、自らが望んだ人生を歩んでほしいと考えるオーナーも増えており、事業承継を強制することが減る傾向にある。

 中小企業の後継者不足は単に個々の問題ではなく、我々の住む地域経済にも深く影響を及ぼすため、事業承継は大きな社会問題となっているのだ。

 そこで先述の黒字なのに事業承継できずに困っている企業や店を、M&Aなどを活用して、第2、第3の売上を確保するために事業承継すれば、この社会問題を解決することができる。

 M&Aの意味は、合併・買収で大きな話に聞こえるが、今や小さな店や事業を承継する場合でも多用されている。ごく少額な金銭のやり取りや、無償譲渡で成立することもある。

 M&Aによって、実績のある企業や店を譲り受けることで、すぐに資産(人材や資源、特許やブランドなどの知的資産など)を引き継げるため、大幅な時間短縮とコストを削減できる。

 特に黒字が続く事業で既存の固定客がいる場合、すぐに黒字利益をもたらすので、リスクが少なく事業承継することができる。

 経営の神様である松下幸之助は、「企業は社会の公器である」と言っており、長年経営してきた企業や店は、顧客、取引先、従業員など地域社会にとって、かけがえのない存在で正に社会の公器である。

 事業の承継は一朝一夕ではできるものではないが、公器性の面からしても後継者不足による黒字廃業はなんとか避けて、企業や店を受け継ぐ価値・魅力は高いのではないだろうか。