事業承継は経営者最大ミッションの一つ

 近年、黒字であっても後継者不在を理由に廃業する企業が増えている。中小企業庁の発表によると、中小企業における後継者不在率は54.5%と報告されている(中小企業白書2024年版)

 事業承継が行われずに廃業が増えれば、雇用や取引が消滅するだけではなく、優れた技術、経験も途絶えてしまう。正に事業承継対策は国家の一大事であり、国難対策とさえいえる。

 では、なぜここまで事業承継が進まなくなってしまったのか。その要因として主に以下の3つが挙げられる。

 (1)経営者が現役バリバリでまだ十分活躍できると考えていること。

 (2)事業の今後の見通しが厳しく、経営者が後継者に苦労させたくないと考えていること。

 (3)経営者は子どもに家業を継がせたいと思っているが、子どもの方に事業承継意欲がないこと。

 かつて中小企業では子どもが継ぐことが当然と考えられていたが、近年ではよい大学を出てよい会社に勤め、自分のやりたいことをしている子どもの姿を見ると、親は継いでほしいと言わないことが親心であり、美徳であるとの考えもあるようだ。

 その結果、事業の継続は子ども(同族)への承継割合が減少し、親族以外の内部昇格やM&Aにシフトしてきているのであるが、それでもまだメインは子どもへの事業承継である。また創業者や家業を引き継いだ経営者にとって、愛情や心血を注いで育て上げた会社は、自分の分身といっても過言ではない。会社を継がせるなら自分の子どもにと言うのは胸に秘めた自然な思いでもあろう。

 翻って、同族会社には同族ならではの強みや利点があることも事実である。経営者(親)の背中を見て育った子どもは、会社に強い愛着を持っているものである。筆者も経営の現場を見てきたが、会社が危機に陥ったときにそれを乗り切るパワーが、子どもとそれ以外の人とでは違うように思う。経営者は子どもが後継者にふさわしいと、もっと自信を持ってもよいのではないかと思うのだが・・

 事業承継とはヒト、モノ、カネ、知的財産の引き継ぎであり、それを契機に経営革新を行い、新しい成長局面へと入っていく。そこまでやり遂げることができて事業承継は成功したといえる。事業承継の真の目的とは経営革新であり、そこから会社を新たな成長への軌道に乗せることだと思う。

 さて、御社の事業承継は大丈夫だろうか⁉