今年も12月に入り何かと慌ただしくなってきた。年齢を重ねると1年がずいぶん早く感じてしまうのは筆者だけではないと思うのだが。
さて、日本の企業にとって、師走は特別な意味を持つ。年の瀬が近づくと「1年の締めくくり」という言葉があちこちで聞かれるが、特に中小企業にとって師走は、単なる暦の区切りではなく、経営の手腕が試される時期でもある。
まず、師走は資金繰りの季節である。年末賞与や仕入代金の支払い、決算準備など出ていくお金も多い。一方で、取引先からの入金が遅れたり、年明けに回されたりすることも少なくない。そのため中小企業経営者は、この時期いつも以上にキャッシュフローの管理に神経を尖らせる。師走に資金をどう回すのかが翌年の経営を左右すると言っても過言ではない。
また、繁忙という意味でも師走は厳しい。小売・物流・飲食業などは書き入れ時を迎える一方、製造業やサービス業では、年内納品、年内対応といった顧客の要望が集中する。限られた人員で多忙な日々を乗り切らねばならず、経営自身も現場に立つことが珍しくない。正に師走という言葉どおり、社長も社員も走り回る季節である。
しかし、師走は試練だけではない。取引先や顧客との関係を深める絶好のチャンスでもある。年末の挨拶回りや忘年会は、感謝の気持ちを伝え、翌年につながる信頼を築く場でもある。このような人と人とのつながりにこそ中小企業の最大の資産でもあるのだ。
さらに、師走は来年を見据える月でもある。1年を振り返り、課題と成果を整理することで、次の一手が見えてくる。厳しい資金繰りや繁忙のなかでも、経営者が未来への構想を描く時間を確保できるかどうかが持続的な成長への分岐点となる。
つまり、師走は中小企業にとって、試練、感謝、計画の3つがそろった月でもある。慌ただしさのなかにも、人の温かさと挑戦の芽が息づいているからこそ、年の瀬を走り抜けた先にある新年の幕開けは、ひときわ清々しい。正に師走というのは、中小企業にとって1年の縮図とも言えるのではないだろうか。
