「コロナ禍 = チャンス」と捉えた企業経営

 新型コロナウイルス感染拡大により、多くの企業が売上高や利益の減少に見舞われている。特に新型コロナウイルスのような自然要因は、政治的要因(法規制)、社会的要因(人口構造)、技術要因(AI・IoT)など他の要因と異なり突如として姿を現し、企業の経営状況を一変させてしまう。

 しかし、こうした環境変化は企業にとってネガティブな要因となるばかりではない。時として大きな効果を生み出すこともある。その代表的な例が事業承継である。筆者の関与している企業においても、コロナ禍を契機に事業承継を模索したり、経営戦略を見直したりする先も少なくない。一般的な企業にとって、これまでの常識や経験が通じない変化への対応は難しい。このような従来の改善方法が役に立たない状況では、仮に経験豊かな先代経営者が指揮を取っても、若い後継者と大きな違いは出せないだろう。むしろ、急激な状況の変化は、先代経営者にとってゼロから経営を見直し、結果を出さなければならないという重責が課せられる。その点、過去からのしがらみがない後継者の方が思い切った発想・行動(改革・改善)が取れる可能性が高い。筆者は環境の変化が事業承継や後継者を育成するうえでの絶好の機会となり得ることを提言したい。上述のように従来の常識が通用しないコロナ禍の時代にあって、事業承継の他にもWithコロナ・Afterコロナを見据えて取り組んでおきたい企業への提案を以下に述べる。

(1)経営戦略・中長期経営計画の見直し

 経営計画を策定し成り行きに任せるのではなく、目指すべき方向性を定め、あらゆるリスクも加味しながら企業を成長させるシナリオを描くことが重要である。

(2)既存事業の見直しと収益の分散化

 現在の収益の柱である既存事業についても、Afterコロナの市場や顧客ニーズの変化を踏まえて見直すことが重要である。既成概念に捉われることなく、ターゲットとなる顧客、提供する価値、提供するプロセス、収益構造などの観点で事業の改善を検討することが重要である。

 コロナ禍において外出自粛により休業を余儀なくされた飲食店が、テイクアウトやデリバリー、ネット販売などに参入したように収益の分散化を図ることも大きなポイントである。検討する際には、下図のように「アンゾフの成長マトリクス」を活用し、各々の可能性を検証することを推奨したい。

 

(3)IT活用による業務効率化

 生産性向上によるコスト削減や、今後待ち受ける多様な働き方に対応するために積極的なITツールの活用も不可欠である。テレビ会議システムやチャットツールのなかには、中小零細企業でも導入しやすい基本無料のサービスも多い。従来の延長線上にない不確かな未来において、仮説力で時流を読み、先手を打っていくことが企業のかじ取りを担う企業経営者に求められている。