商売の基本は信用という商品を売ること

 仕事上、持続化給付金申請についての相談が少なくない。新型コロナウイルス感染症の影響により昨年の月別の売上額に対して対象となる今年の月別の売上額が50%以下なら、個人事業主で100万円、法人で200万円受給できるとうものだ。経済産業省によると8月10日までに、約295万件の中小企業・個人事業主に約3兆8千憶円が支給されているという。

 最近、近隣の青果店に買い物に行ったついでに、持続化給付金の申請について店主に訊ねたところ、意外な答えが返ってきた。「売上げが多少減っていることは間違いないが、有難いことにうちの店は支給の対象外なんだよ」。てっきり既に申請をしたとか、これから申請をするとかいった返答を想像していただけに意外だと思ったわけだ。「それはよかったじゃないですか」と返しつつ、「今年中に50%を切るようなことになったらいつでも相談してください」とその場を収めた。

 この青果店は、小規模な店構えで昔風に言えばごく普通の八百屋さんである。コンビニの台頭で、その数は年々減少の一途を辿っている業種の一つである。そのなかにあって地域に根差し、固定した消費者を対象にコンビニとは異なる独自性発揮で長年にわたり生き残ってきたといえる。異なる独自性を掘り下げて考えてみると、行き着くところは、この青果店に対する顧客の信用度の高さだろう。たとえ、コンビニよりも商品アイテムが少なかったり、駐車場スペースが足りなかったりしても、生活に必要な最低限の品ぞろえと店主夫婦の人情味のあるきめ細かな接客や、「絶対に不良な商品は売らない、買わせない」という信念で成り立っているのだ。

その他にもこの青果店の特長は、青果店の2階をアパートとして貸し出すなど売上をカバーする手段も講じている。これらの信用に基づく真摯な対応と賃貸アパート経営という現代的な方法でしっかり経営の安定化を図っている。このあたりがただの青果店とは違うところである。

何も商売は規模を大きくすればよいというものではないし、時流に乗った商法を取り入れれば必ず儲かるというものではない。あくまで商売の基本は、お客様の顔を見て、良質な商品と信用をあわせて売ることが大切であること、本業をカバーするちょっとした知恵と工夫が大切であることを改めて感じさせてくれた出来事だった。