「主婦パート」の底力を引き出し活かす

 創業相談を行っていると、特に飲食店などの経営者でパートを雇用する際に若い女性ではなく(もちろん求人を出しても応募が少ないという事情もあるのだが)、人生経験が豊富で人当たりのよい人材を求める傾向が強くなってきたと感じる。
 また、私事でたいへん恐縮であるが、妻も主婦パートとして働いており、今勤務している会社がとても性に合うのか、毎日をイキイキと楽しそうに働き、会社でのことを家族によく話してくれる。会社の上司からも常々「辞めないで、このままずっと働いてください」と気を遣ってもらっているらしい。
 長年、サラリーマン生活を送ってきた筆者にとっては、妻の勤務先の一体何がそんなによいのだろうとつい思ってしまう(あるいはいぶかしい)のである。
 妻の話を総合的に分析すると、その会社のよいところは、(1)仲間や人間関係がよいこと、(2)家庭優先や時間など仕事がやりやすいこと、(3)社内の雰囲気がとてもよく気持ちよく仕事ができること、に集約される。
 さらに、何か別の要因はないかと注意深く話を聞いてみると、どうやら昼の休憩時間に大きなポイントがあることがわかった。つまり、それは昔でいう「井戸端会議」的な要素というか機能を有しているのだ。女性同士がお弁当の他にもおかずを一品持ち寄ったり、旅行に行けばお土産を持ってきたり、それらを食べながらよく喋り、よく人の話に耳を傾け、たまった諸々のストレスを解消するのだろう。そうやって午後からの仕事のためにエネルギーを蓄えモチベーションを上げ、生産性を高めていくのである。そういう職場環境だからこそ誰かが風邪などひいたり、長期の入院を余儀なくされたりして人手が足りなくなった時にも、全従業員が一丸(ワンチーム)となってカバーし合い難局を乗り切ることができたという。 
 そういえば、筆者が過去に企業診断した製造業でも、毎日3時の休憩時に全社員へ茶菓子を配る光景を見て、社長にその真意を訊ねたことがあった。「うちは零細企業だから大したことはできないが、こんなことでも特に女性従業員がすごく喜んでよく働いてくれるんだよ」と照れながら話してくれた。
 その当時はそれほど気にも留めなかったのであるが、今考えてみるとその社長は女性の心理や特性を十分わかっていたのかもしれない。
 “主婦パートの働きやすい環境づくりと、ちょっとした気配りで主婦パートの底力を引き出し活かす”
「うちのパートさんは会社が思うように働いてくれない」と不満を抱いている経営者の皆様のヒントになれば幸いである。