店(企業)経営は「不易流行」

 松尾芭蕉が説いたことばに「不易流行」がある。不易は永続性を表し、変わらないものを指している。一方、流行とはその時々の新風であり、その根源は一つであると芭蕉は説いた。経営にとっての不易とは、哲学や理念であり、流行とは、広い意味での時流と理解することができる。
 特に、哲学や理念は、時代や環境がどのように変わろうとも変えてはならないものの一つである。それと同時に顧客志向や顧客密着も経営にとっては不変の原理原則である。
 バブル経済の崩壊以降、特に小売業経営の状況が厳しくなって久しいが、「勝ち組」と「負け組」の格差が拡がり、勝ち組を謳歌できるのは商圏内でもごく僅かである。勝ち組になるためには、より顧客志向の店(企業)、顧客をいい気分にする店(企業)になることである。その前提条件として、商品力の差別化、つまり「欲しい商品が揃っている店(企業)」であることが求められる。したがって、すべての根源は商品力に帰結する。
 いい気分の店(企業)とは、商品を納得して購入でき、それに加えてより質的レベルの高い満足を提供してくれる店(企業)である。その実現のためには、商品へのこだわりと顧客伴走型が条件となる。そして、地域に根ざしている店(企業)である限りは、地元に密着していくことが重要であろう。
 一方、eコマースが急速に進展している。店(企業)に出向かなくても、目の前のパソコンやスマホで世界中の仮想店舗につなげてキャッシュレスで買い物ができるのだ。eコマースによって商圏の二極化が急速に顕在化した。具体的には、コンビニに代表される超最寄り型小商圏と地球レベルでの極大商圏である。
 特に立地を決めて有店舗販売を柱とする小売業は、地元商圏のお客様に深く根を張っていくことが基本戦略となるが、今後はeコマースについても避けては通れず、既存顧客を守り抜き、新規顧客を開拓する新しいシステムの一つとして有効に活用すべきである。取りも直さず顧客からの絶対的な支持と応援を勝ち取るためには、「商品力」を高め、「お客様」と「地元」に徹底的に密着していくことを基本に置き、先を見据えてネットの有効活用を図ることが今の小売業界に強く求められている。