個店の価値(便益)について考える

 最近何年かぶりで眼鏡を購入した。安売り量販店ではなく一般小売店からである。想像していたよりも低価格だったことに驚いた。我々世代にとって眼鏡といえば高額なものとばかり思っていたが、今や眼鏡は5,000円で買える時代となっている。1人で3つも4つも持ち、洋服や気分に合わせて使い分ける人も少なくない。

 これほど眼鏡が安くなったのは、中国などの海外から格安フレームが大量に輸入されるようになったことや、レンズの加工は、かつては職人芸の世界でその人件費が眼鏡の値段を押し上げていたが、安売り量販店では、中小メーカーからレンズを購入する比率を増やして原価を下げ、店のスタッフを最小限に減らすことでムダなコストを削ぎ落し5,000円という価格を実現している。

 筆者も一度は安売り量販店での購入を検討したが、結局のところ一般小売店からの購入を決めた。決め手となったのは、眼鏡を購入する数ヶ月前に相談に行ったところ、店のスタッフの応対がすこぶるよかったことである。現状の目の状態をチェックしたうえで、丁寧にアドバイスをしてくれた。

 消費者が店を選ぶ理由は、(1)商品やサービス自体に関する理由(品質・品揃え・鮮度・技術)、(2)立地など店に関する理由(店舗のつくり・立地)、(3)売り方に関する理由(商品知識・接客・お得情報・広告)、(4)価格に関する理由(リーズナブル・高級)の4つである。筆者の場合は、主に(3)の売り方の良さ(商品知識・接客)で選んだことになる。

 どの理由で店を選ぶかは顧客によりさまざまであるが、顧客にとって都合の良さ(便益)で店を選ぶのが基本である。この便益が店の価値であり、顧客に他店以上にこれらの価値を提供することにより、差別化を図ることができる。

 そこで、経営者の皆さんにとって店を経営するうえで一番大切にしていることを思い返してほしい。換言すれば、どうしてもそこはゆずれない、こだわるところは何なのかを。

 商売の基本は、自分と同じ価値観を持つ顧客をターゲットにすることであり、そのこだわりが店にとって大きな強みとなり、さらにそれらをブラッシュアップすることで、一層他店との差別化が可能となるのである。