小さな成果に目を向けよう

 新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中が閉塞感と不安感に覆われている。このような時こそ明るい話題を提供し世の中を元気にしたいものである。気休めと思われるかもしれないが、人間という生き物は、たとえそれが小さな光でも希望が見えたとたんにギアが入ってやる気がみなぎるようにできているらしい。仕事でも新幹線による移動中でも、道中半ばを過ぎると残り半分がよりずっと少ないように感じた経験はないだろうか。
 よく目途が立ったという言い方をするが、目途が立つまでは大変だが、目途が立ったとたんにもう既に王手をかけたような事実上終了したような安心感が湧いてくるものである。
 ところで、過去の活性化した会社や組織を思い浮かべると「やればできる」と思っている社員が多く存在していたことに気づく。それは楽観的な人材が多いというのではなく、目途に関する意識を心得ているからだと思う。目途の意識を持つと、仕事や目標のゴールがぐっと短いものに感じられるようになり、希望の沸点も低くなるのである。より小さな光でも希望を感じ、ギアが入ってしまうというわけである。
 そのような職場づくりのキモは、小さな成果を見逃さないマネジメントを展開することである。小さな成果を見つけ出し、そのことを褒め称え、さらに大きなものへとつなげていくきっかけを皆で探すことによって、なんらかの手応えが現れるのだ。その手応えを重ねるうちに目途が立ち始めるのである。
 例えば、今までに何度も訪問しても門前払いだった会社の社長が話だけでも聞いてくれたとか、以前クレームのあった顧客から、クレームへの対応が良かったことから、感謝とお礼の気持ちを自社サイトに投稿してくれたとか等々である。要はそのような小さな成果を皆で認め合って共有すればいいだけのことであって、それほど難しいことではない。
 こういう厳しい時代だからこそ、どんなに小さなことでも希望の兆しと捉え、前向きに進んでいくことが極めて大切だと感じている。