女性に気持ちよく働いてもらうこと = 優良企業への条件

 筆者は年6回程度、千葉県鎌ヶ谷市にある研修施設に出張する。最寄りの駅からタクシーを利用して現地まで行くのだが、乗り場で待っているときにいつも心の中で「女性ドライバーであればいいな」と思っている。そう思うようになったのには理由がある。10年来この施設に来ており、その都度タクシーを利用してきたが、男性ドライバーの場合、ほとんどの人がどちらかといえば無愛想であった。たとえ料金メーターを稼げなくても「もう少し客あしらいをよくしてほしいな」と残念に思っていたからだ。
 そこへいくと女性ドライバーは実に気持ちのよい応対である。優しい運転や「かしこまりました」「ご乗車ありがとうございました」などは当然のこととして、会話にも大きな違いがある。

 例えば、筆者が野球好きだとわかると、日ハム2軍練習用鎌ヶ谷球場での吉田輝星投手の練習の様子や、大谷翔平選手を送迎したときの車内でのエピソードを楽しく聞かせてくれた。たった15分程度のタクシーという個室の中で、心地よい空間を提供してくれることがとても嬉しかった。
 近年、いろいろな業界に女性の進出が目立つ。それもかつては男性社会だった運送業、建設業などのきつい職場へだ。特に最近目にした光景で感動を覚えたのは、車の整備工場で女性スタッフが淡いピンクのつなぎ服を着て大型トラックのタイヤをゴロゴロと片手で転がしていたことだ。男性に負けず劣らず、否それ以上に男前で実にかっこよかった。「人手不足倒産」など物騒なフレーズが世の中を席捲している時代にあって、女性が活躍できる場所とは、労働環境(=働きやすい環境)が整っていることだと推測できる。
 いい仕事をするのに男性も女性もない。そうであれば女性ならではの特長を活かした雇用を考えることが大切である。そこで優秀な女性スタッフを採用できるよう職場環境を整備してみてはどうだろう。例えば、ハード面では、トイレ、更衣室、食堂の改装や託児所の開設など、ソフト面では、離職ブランクがあっても職場への復帰がスムーズいくようなシステムの導入などが挙げられよう。
今や大企業や先進企業に限らず女性が気持ちよく働ける職場の環境整備こそが、企業が生き残る条件として大きくクローズアップされてきている。採用で悩む前に一考してみてはどうだろうか。